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本田直之が語る「ライフプラン」とは? 「もっといろんな生き方を、見るようにしたほうがいい」
2021.12.16「もっといろんな生き方を、見るようにしたほうがいい」
今回お話を伺ったのは、レバレッジコンサルティング社長の本田直之氏です。2021年8月、当社の顧問に就任いただきました。外資系企業を経てMBA留学、参画した企業を上場会社に導いた経験を持ち、デュアルライフの先駆者、ワインやサウナブームの火付け役としても知られています。
ライフプラン、デュアルライフ、イグジットの3つのテーマで3回にわたってお伝えします。
#02
本田直之が語る「デュアルライフ」とは?
「これができたら最高だな、を追いかけてみただけです」
(2021年12月23日更新予定)
#03
本田直之が語る「イグジット」とは?
「イグジットはリタイアを意味するものではない」
(2021年12月30日更新予定)
【 プロフィール 】
レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役 シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役としてJASDAQ上場に導く。
現在は、日米のベンチャー企業への投資育成事業や、クローバルブランド企業のアドバイザーなども務める。ハワイ、東京に拠点を構え、年の5ヶ月をハワイ、3ヶ月を東京、2ヶ月を日本の地域、2ヶ月をヨーロッパを中心にオセアニア・アジア等の国々を旅しながら 、仕事と遊びの垣根のないライフスタイルを送る。これまで訪れた国は61ヶ国220都市を超える。著書に、レバレッジシリーズをはじめ、「パーソナル・トランスフォーメーションコロナでライフスタイルと働き方を変革する」「新しい働き方」、「オリジナリティ 全員に好かれることを目指す時代は終わった」等があり、著書累計300万部を突破し、韓国・台湾・香港・中国・タイで翻訳版も発売。
「もっといろんな生き方を、見るようにしたほうがいい」
土橋 まずは、ライフプランについて、お話をいただこうと思います。
家族構成やライフイベント、収入、支出、預金残高などをベースに、短期・中長期で人生の目標を定めていくのが、ライフプランだと思います。必要ならば、適切に保険に加入する。しかし、保険の契約内容を理解していない人が80%強もいる、という調査結果もあります。
本田さんはライフプランについて、どんな解釈をお持ちですか。また、ライフプラン通りに実行できている人、できていない人には、どんな違いがあるのかもお伺いしたいです。
本田 一つ言えるのは、ライフプランナーやファイナンシャルプランナーがモデルケースで出してくるものは、経営者には当てはまらないということです。
例えば、40歳までに家を買って、子どもの教育費が何歳でどのくらいに必要になって、何歳で車を買い換えたりする。それで60歳で定年して退職金が入って、子どもが学校を卒業する。モデルケースって、そういうパターンが多いでしょう。
基本的に、会社員のためのプランしかない。だから、経営者になろうという人には、あのライフプランを見てもイメージが湧かないですよね。
僕はこの30年くらい、どうして日本人のライフプランイメージが変化しないのか、ずっと不思議に思っていたんですが、このモデルケースに問題があるんだと思う。
海外に行くと、いろんな人がいて、いろんな考え方があって、こんな画一的なライフプランを考えている人はいない。その違和感がずっとあったんですね。
ライフプランって、本来はクリエイティブでないといけないんです。そうでないと、人生は楽しくないじゃないですか。人生1回しかない。どう生きていくかは、自分で考えないと。だから、ライフプランづくりには、クリエイティブのセンスが必要です。過去に成功した人のパターン化されたものをやっても意味がない。
特に経営者は道なきところに道を作るのが、仕事ですよね。自分の人生の道を作らなければいけないわけですから、もっともっと自由であるべきです。既存のイメージは捨て去ったほうがいい。
事業の売却やM&Aに対していまだにネガティブなイメージを持っている人が多いのもそうなんですが、日本人は過去のやり方や慣習にとらわれ過ぎているんです。いろんな選択肢を持たないといけない。
その意味でも、もっと、いろんな人の生き方をちゃんと見たほうがいいと思うんですよ。実際、違うわけですから。ライフプランはとにかく柔軟に考える必要がありますね。特にこれからの時代は、大きく変化していきますから。
10年後をもっと自由に考えないといけない
土橋 変化は本当に激しいですよね。
本田 僕が日本とハワイでデュアルライフを始めた2007年は、iPhoneがアメリカで発売されたタイミングだったんです。それまではガラケーしかなくて、ノートパソコンを持ち歩いたりしないといけない時代だった。もっといえば、オフィスで働くのが当たり前だったんです。それが、たった10年くらいで解放されてしまった。
僕の場合は、オフィスに行かずにどこまでできるか、と思って始めたわけですが、10数年で、こんなことになったんですよ。あの頃、10年後に何が起こっているかなんて、誰も想像できなかったんです。これは、次の10年先も同じだと思う。何が起きるかわからない。
間違いなくいえることは、もっと便利になるし、もっと暮らしやすく、仕事もしやすくなるということです。通信も3Gが5Gになって、劇的にスピードが上がったし、これからは家も語学も、それこそ保険も必要なくなるかもしれない。外国人との仕事も、もっともっと増える。
僕が今、問題だと思っているのは、国のビザの制度です。今、アメリカで働くとなるとビザが必要です。なぜなら、アメリカに行けば、アメリカ人の職を奪ってしまうから。でも、翻訳機の性能が上がってネット上で仕事ができるとなったら、ビザなんていらないでしょう。
逆にいえば、能力のある人はアメリカと仕事ができるチャンスが広がる。アメリカの人たちは、意欲のある優秀な人を日本でも雇える。
僕は秘書をオンラインで雇っているんです。世界中のどこに住んでいても、それならできるし、日本人である必要もない。もうこういう時代なんですよ。
土橋 世界も大きく変わってきている、と。
本田 これからは、ビザなしに世界中で仕事ができるようになるかもしれない。ということは、逆に言うと日本人は世界中の意欲の高い人と闘わないといけない、ということです。経営者にとっては、意欲が高くてコストの安い人が雇える時代になったんです。
日本人にとっては、厳しい時代でもあります。実際、日本人は使いにくくなっている。向かっている方向が、ヨーロッパみたいになりそうだから。労働者が守られすぎているんです。
ヨーロッパって、失業保険が2年くらいある。2年働いて、2年休んで、みたいな人がたくさんいる。これは、経営側には難しいんですよ。
ただ、これも変化するかもしれません。それこそ、車の運転だって、なくなっちゃうかもしれない。ドライバーという仕事はなくなる。
だから、10年後をもっと自由に考えないといけないんです。生き方も、会社の経営も、大幅にスタイルが変わると思うから。
知っているものしか、選択肢に入らない
土橋 未来を予測して取り組まないと、取り残されてしまいますね。
本田 経営者は先を見て生きていかないといけないですね。だから、過去をベースに作られたライフプランなんて、見てもしょうがないと思います。
土橋 やはり日本と海外の考え方は大きく違いますね。
本田 日本人は、パターン化が好きなんです。海外は、いろんな人種や民族がいて多様な価値観がある。日本は、みんながやったら自分もやらないといけない、という同調圧力がやっぱり強い。
アメリカは象徴的ですが、移民も多いし、多様な考えがあるので、パターンというものがない。だから、人と違うことをやるのも怖くない。それが当たり前になっている。人と同じことをやらねば、という発想がそもそもない。
土橋 日本は高度経済成長の時代にポジティブなものもたくさん得たわけですが、今となってはネガティブな影響が残る点も多いですよね。終身雇用制や労働集約は、当時の時代には合っていたし、必要な施策だったかもしれませんが、すでに時代は変わってしまった。
ガラパゴス化で周囲が見えない、自己評価できる人は少なく他己評価が主体、世間体を気にし過ぎ。そんなところが根底にありますよね。
今回のパンデミックでは、リモートワークの必然性が高まり、ライフスタイルの多様化が求められるようになりました。前向きに捉えると、この機会を活かしてシフトチェンジできる経営者には、チャンスがたくさんあるのかもしれないですね。
本田 そうですね。経営で最も大事なことは、先を見て物事を判断していくこと。道なきところに道を作る仕事だから、人と同じことをしていたら絶対にダメですよね。御社もそうでしょう。他のM&Aの会社を真似したってしょうがない。差別化しないと。
日本のライフプランの考え方は、その象徴だと思う。曖昧でぼんやりした考え方の人が多いんですよ。その問題点に気づいておく必要がある。曖昧でぼんやりじゃ、やっぱりダメなんです。経営者も考え方を根本的に変える必要があると思う。
土橋 やはり、居心地のいい今に甘んじてしまうのでしょうか。
本田 ただ、時代はどんどん進んでいきますから。人口も減っている。1億人以上の人口があれば内需でやっていけますが、減れば外需を得なければいけなくなる。予測はできないけれど、もっと良くなるにはどうすべきか、を自問すべきだと思うんです。
僕が若い人に言うのは、たくさん道を見たほうがいい、ということです。仕事選びもそうですが、たくさん見たほうがいい。変な人に会ったほうがいい。
子どもに将来、何になりたいか、と聞くと、ほとんどの子がお医者さんとかサッカー選手とか言うでしょう。Googleを超える会社を作りたい、なんて言う幼稚園児はいない。理由は簡単で、見たもの、知っているものしか、選択肢に入らないからです。
大学生の就職活動も、たくさん面白い仕事があっても、大きな会社に入るイメージが強すぎて、他を知らないから選択肢が広がらないんです。
いろんな人、いろんな生き方を見るべき
土橋 本田さんは、当時としては珍しい選択をされますよね。外資系ですね。
本田 学生時代から、まわりに変な人が多かったんです。特に僕たちの時代は、学生起業も流行っていて、変わった仕事もたくさんあった。だから、僕自身は普通の大企業の会社員になるイメージは全然わきませんでした。いろいろ見ていったら、もっと楽しいことがあることに気づいていったんです。
やっぱり、いろんな人、いろんな生き方を見るべきなんです。そうしないと、選択肢に入ってこない。会社の経営もそうです。イグジットにしても、知っていれば起業するときから視野に入れられる。逆に、選択肢に入れておかないとこれからの時代は損をしかねない。可能性を狭めてしまうと思うんです。
経営不振になったので会社を売りたい、という人もいるじゃないですか。これ、かなり損をしていますよね。海外ではM&Aは、不動産取引みたいに定着しているから、ある程度の規模にして売って、そこでまた次のことをやるという人が多い。資金があれば、さまざまなことができるわけですし。
土橋 そうですよね。2回目、3回目のほうが、面白いことをやっている人も多いですね。
本田 人脈もある程度、形成されているし、挑戦もしやすい。人も集めやすくなる。会社を経営してるときに起こる問題って、事業に違いがあってもけっこう同じなんです。
例えば、人の問題などは必ず同じようなことが起こる。景気が悪くなって売り上げが落ちる、なんてこともそう。そういうときにどうやって乗り越えるか、一度経験があると落ち着いて対応できますね。予測もできる。失敗も活かせる。
松栄 シリアルアントレプレナーも増えてきていますね
本田 僕のまわりにも、事業を売却して新しいことをやる人は多いですよ。時間的、精神的余裕ができるから選択肢も広がる。今は働き方も変わる。そうすれば、楽しい。
土橋 多種多様な選択肢の中から選べますね。
本田 生き方もそうなんですよ。よくリタイヤという言葉も聞くけど、そんなことをする必要があるのかな、と。仕事が嫌いならいいですが、楽しいならリタイヤする必要はない。ビジネスを絡めて、いろんなことができると思うんです。
何かを起こすことは、やっぱり面白いですから。だから、1社作って、ある程度になればそれを売って、また新しい会社を作るというのは全然ありじゃないかと思う。
土橋 新しいことにチャレンジすると、今までの人脈、これからの人脈が重なるように広がります。私自身も、ITから始まり、アパレルやTGCのようなイベント、そして金融関連のビジネスと異業種を横断してきたので、各方面、いろいろな方からご相談やご紹介をいただきます。
やっぱり人のつながりは魅力。人生の醍醐味だとも思っています。もちろん、選択肢を増やすためには、少しお金があったほうがいいですよね。
本田 だから、リタイヤなんてする必要はないんです。それよりも、楽しむための仕事ができるようになればいい。そのためのライフプランを作ればいいと思うんですよ。
ライフプランについて、さまざまなお話をいただきました。次回は、本田さんが2007年から実践されているデュアルライフについて、お聞きします。