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「M&Aはポジティブな印象だった」22店舗を展開するヘアサロンの今後の経営戦略とは
2022.07.152022年4月。東京、神奈川、千葉、埼玉と、関東近郊に22店舗のヘアサロンを展開する株式会社Oasisが、いわかぜキャピタル株式会社による資本参加を受け入れた。Oasisはコロナ禍の影響をもろともせず、現在も収益を伸ばし続けている。
いわかぜキャピタル株式会社は、中堅・中小企業を中心に投資を行っている投資ファンドだ。
毎年複数店舗を新規出店している急成長中のOasis がM&Aに至ったのはなぜか。いわかぜキャピタルがOasisに感じた魅力とは。譲渡企業であるOasisの富岡弘行さんと江川隆さん、そして譲受企業のいわかぜキャピタルの植田兼司さんと舟橋知弘さんに話を聞いた。
譲渡企業:株式会社Oasis 富岡弘行、江川隆
譲受企業:いわかぜキャピタル株式会社 植田兼司、舟橋知弘
聞き手:弊社担当コンサルタント 澤野太暉
構成:ライター 土橋水菜子
M&Aはむしろ、会社にとってプラスとなる【譲渡企業:株式会社Oasis】
――この度はM&Aのご成立、おめでとうございます。今の率直なお気持ちをお聞かせください。
富岡 安心しています。無事、成立するのか、最後の最後までわからなかったので……。会社はいわかぜキャピタルさんへお譲りしますが、一年間は私も残り、引き継ぎなどを行う予定です。しばらくの間は一緒にお仕事をすることになるので、いろんなことを勉強できるチャンスだと感じています。
江川 はじめ、富岡からM&Aを検討していることを聞いたときは驚きました。ただ、経営者が変わることにあまり不安はありませんでした。会社の将来のことを考えると、期待のほうが大きかったのかもしれません。
――現在執行役員の江川さんはOasisに残り、次期トップになるとのこと。江川さんをはじめ、従業員の方への説明はスムーズに進みましたか。
富岡 日頃から、江川はもちろん、周囲の人には隠しごとをしないようにしています。それが信頼につながると考えていて。そのため、ありのままを素直に伝えました。
M&A成立に向けて、いわかぜキャピタルの植田さんや舟橋さんはもちろん、弁護士の方やテナントのオーナーなど、多くの方との話し合いがありました。美容師目線ではなかなか気がつくことのない指摘や提案があり、とても視野が広がりましたね。会社が大きくなるためには、そのようなサポートも必要です。そして、江川はその辺りを理解してくれるだろうと感じていたんです。
江川 私は店の管理や経営が学びたくて、Oasisに入社した経緯があります。店長として勤務した後は、オフィスでの経理業務や広告の打ち出し、人材採用を担当しました。管理職を経験していたため、富岡の気持ちも少しわかっていたつもりです。たしかに、M&Aは従業員によってはマイナスのイメージを受ける人もいるかもしれません。けれども、富岡が段階的に伝えてくれましたし、質問にも答えてくれたので、特に大きな問題が起きることもなく、M&Aに対して全社的にポジティブな印象だったと思います。
――譲渡前後で、会社に起きた変化や、印象に残っていることはありますか。
富岡 譲渡を検討している段階では、経営方針や教育方法も変えずに従来通り行ってきました。けれども、これからはむしろ変わってほしい。変わることで、さらに会社が成長してくれたら、と願っています。植田さんはOasisを冷静に、第三者の目で分析してくれました。そんな植田さんから「ここまで、よく頑張ってこられましたね」と言われたときは、胸にジーンとくるものがありました。これまで積み重ねてきたものが、認められた気がしたんです。
Oasisでは、新たに店舗を出展する際に、駅ごとにマーケティングを行って、出店の是非を決定しています。ビジネスには、情熱や思いももちろん大切なのですが、状況を定量的に見て分析・判断することが欠かせません。その点、いわかぜキャピタルさんは細かい数字まで確認してくださって、Oasisのスタイルと合っているように感じました。
会社自体はまだまだ伸びていくと思っています。植田さん、舟橋さんとなら、一緒に成長していくことができると考えています。
――今後のOasisが楽しみですね。
富岡 引き継ぎで、あと一年ほど会社に残る形になっています。植田さんからいただいた言葉に恥じないよう、最後までしっかり仕事をしたいと思っています。
江川 私自身はまだまだ勉強不足なので、これからしっかり学ぶことができたら、と考えています。店舗拡大や、新しい事業にも挑戦してみたいですね。
持続的な成長をともに目指していきたい【譲受企業:いわかぜキャピタル株式会社】
――いわかぜキャピタルさんは、中堅・中小企業を中心に投資をされていますね。これまでたくさんの企業を見てこられたかと思いますが、Oasisさんを選んだ決め手について教えてください。
植田 我々は、日本の中堅・中小企業の底上げを目指して、投資を行っています。そのため、30〜40代の若い経営者の方と一緒にお仕事をさせていただく機会が多くあります。その中でも、Oasisさんは柔軟で、非常にスマートな手法で経営をされている印象を受けました。ヘアサロンは世の中にたくさんあります。そのような業界で、どのように生き残っていくかと考えたときに、Oasisさんは「人」をとても大切にされていることに気がつきました。これから就職する人には「アカデミー」というシステムを提供し、ひとり立ちができるようになればフランチャイジーで、ご縁をつなぐ。「続かない、育たない」と言われるヘアサロン業界の問題に気づき、改善策を見つけて実行しているのは、たいしたものだと感じました。
舟橋 成長戦略を描いて経営をされているのが、よくわかりました。スタイリストとして活躍されていた富岡さんご自身の経験を活かして、人材育成もとても工夫されています。植田が言ったように、働いている従業員の方にたくさんの活躍の場を提供しているのは、大きいと思います。例えば、1店舗、2店舗ほどの展開ですと、働く場所が限られて、どうしてもキャリア形成が難しくなってしまう場合もあります。けれども、Oasisさんは綿密なマーケティングのもと、お客さんをしっかり増やし、現在では22店舗にまで展開されています。ぜひご一緒したいと思いましたね。
――ヘアサロンへの投資は、今回が初めてと伺いました。やはり、Oasisさんの経営方針にポイントがあったのでしょうか。
植田 このコロナ禍で、美容業界も痛手を被ったと思っています。美容業界を含め、さまざまな業界の動きを注視していたのですが、Oasisさんは比較的受けた影響が少ないことがわかりました。これはすごいことです。また、新店舗を出店する際の「勝ちパターン」を持っておられるのも魅力的でした。大企業でもなかなかパターンをつくることができずに、撤退していく店が多いのが現状です。Oasisさんは、マーケティング戦略を立てるのが非常にお上手なんです。
舟橋 アカデミーと実際のサロンで経験を積んでもらい、新しい店舗でも同じクオリティを提供されています。そのため、新規出店した際に、黒字化するスピードもとても早い印象を受けました。組織としてしっかり確立されていて「強いな」と思いました。
――いわかぜキャピタルさんは、多店舗展開している飲食店への投資もされていますね。その辺りのノウハウをお持ちという文脈でも、Oasisさんとの相性がいいのでは、と感じていました。
植田 投資をすれば、長い時間をかけてお仕事をご一緒することになります。そういう意味では、我々も投資先の経営者の方から「選ばれる」立場だと思っています。Oasisさんは活力があって、マーケティング手腕もあって、経営計画も確立されています。そのような方々と、ともに取り組めることになり、非常にありがたいことだと思っています。
舟橋 企業のポテンシャルや将来性はもちろん、持続的な成長を目指していける方とお仕事がしたいと考えています。そのため、事前にしっかりコミュニケーションをとった上で、投資の意思決定をしています。マネージメントインタビューをさせていただいたのですが、Oasisさんとなら何の問題もないと感じました。
今後、事業計画を進めていく中で、課題が出てくる場面もあるかと思います。そのようなときには、手を取り合って一緒に前に進んでいくことができれば、と思っています。
===編集後記===
Oasis様は、コロナ禍を跳ね除け、長きに渡って高い収益を出し続けている会社です。誰の目で見ても「将来は手堅い」状態であったため、この成長性を評価していただける会社とおつなぎしたいと考え、いわかぜキャピタル様にご紹介しました。
いわかぜキャピタル様は金融機関や年金基金、保険会社といった機関投資家の方々から資金を集め、そのお金をもとに各企業への投資をされています。そうして生まれた利益をリターンとして、投資家へお戻しすることになるため、買収監査(DD)のレベルはかなり高いものとなります。
しかし、Oasisの富岡様は経営計画をとても論理的に立てられているため、その辺りは問題ないと考えていました。各店舗の大きさとスタイリストの数から、店舗ごとの伸び代を一つずつ算出し、今期、そして来期の予想を算出して、いわかぜキャピタル様にご提案しました。
M&Aが成立した背景には、江川様のご存在も大きかったと考えています。組織の次の担い手が育っていれば、外部からリクルートを行う必要がありません。そのため、投資をする側からすると安心材料になります。
M&Aが成立し、売り手企業様、買い手企業様から感謝のお言葉をいただくたびに、喜びを感じます。今後も皆様のお役に立てるよう、尽力してまいります。