株式会社ドリコム 内藤社長インタビュー

 今回お話を伺ったのは、ゲーム事業を中心としたWebサービスを提供する株式会社ドリコムの代表取締役社長である内藤裕紀氏です。大学在学中の起業から上場、上場後の転換など波乱に満ちたストーリーとともに、M&Aを含めた今後の戦略について語っていただきました。

経営者プロフィール

 1978年東京都生まれ。京都大学在学中の2001年にドリコムを設立。日本で初めてのブログサービス「マイプロフィール」のサービスを提供し、設立から43ヵ月の2006年に東証マザーズへ上場。現在ではスマートフォン向けのゲーム事業、広告・メディア事業を主領域として展開している。

ドリコム創業の背景について

土橋:ドリコム創業までの経緯を教えてください

内藤社長:高校生になり、漠然と将来について考えていた時、偶然、日経新聞に載ってた経済シンポジウムの広告に目が留まり、興味がわいて通い始めたんです。そして、経営者の話を聞くうちに、自分も会社の経営者になりたいと思い、経営に近い勉強ができるのではと思い、京都大学の経済学部に入りました。

ただ、いざ大学に入ってみたら、授業はマルクス経済がどうのこうのとか、全然経営に直結する内容ではなくて、早々に学校に行くのを止めて、企業から受託する形で個人事業を始め、2001年に法人化しました。

事業について

土橋:受託から、自社のプロダクトを作るまでの過程はどのようなものだったのでしょうか?

内藤社長:受託の仕事がインターネット事業の企画立案だったのですが、企画の一環で、ブログサービスの前身となるような個人で情報を発信する自己紹介的なサービスを作ったんです。ただ、個人の自己紹介や日記では継続的に更新されず、知り合いしか見ないため、トラフィックが取れないのが問題でした。そうした背景から、特定の人ではなく、不特定多数に向けての情報発信を目的とするブログへシフトしてきました。いまでこそ情報を不特定多数に発信するサービスは当たり前になっていますが、当時は、ニュースメディアや掲示板、日記などがWebサービスの中心だったので、目新しさはありました。

土橋:起業してから上場まで早かったですね。資金調達などはどうされたのですか?

内藤社長:お陰様で、ブログサービスが順調に拡大し、設立から43カ月経った20062月に上場しました。事業が順調に拡大していたのでほぼ自己資金で賄い、少し出資してもらいましたが、外部の株主は10%ぐらいだったと思います。

土橋:すごい流動性の低さですね。その後の事業の流れはどのようなものだったのでしょうか?

内藤社長:法人向けにブログサービスシステムを提供するのが主力事業だったのですが、そんなに顧客社数が増えるものではなく、成長に限界を感じていました。

その後は、新たな注力領域として、社内コミュニケーションのシステムと、HPの制作システム、の二つのサービスに投資を始めたのですが、事業が軌道に乗り、収益が出て投資を回収するまでに時間がかかり、上場時の黒字から一転して、赤字を計上することとなりました。そこで、BtoCサービスの相対的な収益化の容易さに着目し、着うたや着メロを提供する会社を買収しました。これがドリコムにとって、最初のM&Aでした。

ただ、既存事業が赤字だったため、資金調達には苦労しました。その後、何とか会社の立て直しに成功しましたが、この数年は経営者として最も辛い時期でした。ただ、この経験のおかげで、何かに投資するにしても、どこまでならアクセルを踏んでも戻れるか、線引きが出来るようになりましたね。

土橋:ゲームがメイン事業になったのはどういう流れだったのですか?

内藤社長:業績の回復に目途が立ったのが2008年でしたが、その後どの領域で事業を成長させていくか模索していた2009年にFacebookが自分のプラットフォームを開放するというニュースに接しました。瞬間的に、SNSが次の成長領域になるだろうと思いました。そこで、SNS上でプレイするゲームを開発、提供する事業を立ち上げたところ、日本でmixiがオープンして、GREEDeNAが出てきて。その後、ゲーム事業が一気に成長し、ブログサービスを閉じて、リソースをゲーム事業に集中させることとしました。その後は、ゲーム事業がメイン事業になっています。

土橋:そこからは順調で特に問題はありませんでしたか?

内藤社長:2017年にバンダイナムコエンターテインメント様と協業して、プラットフォームを作るという挑戦をした際は、過去最高の赤字を出ました。ただ、先ほどお話しした、上場後の経営立て直しの経験があったので、どこまでが戻れるラインかが分かっていましたので、ここまではやろうと決めて積極的に投資をしました。おかげさまで、投資も徐々に結実し、主力の既存ゲーム事業の収益性も向上した結果、今期は過去最高利益になっています。

土橋:今後の成長戦略についてはどうお考えですか?

内藤社長:M&Aに関して言えば、ゲーム事業を引き続き伸ばすにあたり、積極的にM&Aを検討したいと思っています。実際に、前期と今期で2社ゲーム会社を買収しています。さらにIPもひとつ買収しており、今後も経済合理性の高い案件、ゲーム事業を成長させる必要と感じる案件があれば検討していきます。

また、ゲーム以外のドメインへの参入も始めています。音楽や漫画などは、ゲームに次いで今後デジタル化が加速しそうな領域であり、ドリコムの事業の性質上、どれだけ多くのIPを保有できるか、というのが競争力の源泉となります。ですので、そういった点からも、M&Aを通じて、多様なエンターテインメントコンテンツ、IP、エンターテイメント企業を取得し、展開することは視野に置いています。

M&Aについて

土橋:買収を検討する企業に求めるものは何かありますか?

内藤社長:伸びそうかどうか、ですね。コストカットをして利益を出すM&Aというよりかは、事業が今後伸びそうかどうか。そのために足りないものを見定めて、足りないものを提供していく感じでやっています。

ドリコムがM&Aを行うにあたっての強みは、デジタル化推進力と、マネタイズエンジンとしてのゲーム事業がある、の2つになりますから、それらを活かした形で進められればと思っています。

土橋:では、相手の経営者に求めるものはありますか?

内藤社長:多くのM&A案件は、現経営者が経営から退きたいことを理由に、会社を売るというケースが多く、どちらかというと、買収後の経営者を誰にするのか、の方が問題となります。

プレイヤーと経営者では求められるスキルが違いますし、目先の課題を潰していくマネジメントと、数年先のことを描く経営は本質的に違いますので、人材の確保は重要な課題になります。ですので、相手方の経営者には、M&A後の経営者の人選に際しての的確な助言をはじめ、スムーズなPMIに向け協力していただけることを望みます。

土橋:M&Aしたときに残った人達のハレーションが起きたりはしませんか?

内藤社長:ハレーションは無いです。また基本は、買収先の従業員が引き続き事業を主導し、ドリコムはそれをサポートする、というスタンスでいるため、カルチャーや会社自体をドリコムに合わせて変えるということはしません。

ただ、ハレーションではありませんが、M&Aにより従来プレイヤーだった人が、経営者になるという場合、プレイヤーとしての仕事も引き続き行いつつ、新たに経営の仕事が付加されるため、負荷を軽減し、安定的に働ける環境を整備するということが重要な課題だと認識しています

土橋:今までのM&Aうまくいったことは何でしょうか?

内藤社長:今年の3月にM&Aによりできた子会社は、当初想定を大きく上回る収益をあげています。本社による管理ではなく、足りない要素を足す、というスタンスがうまく機能したのだと思っています。その会社は、依然は別の上場会社の子会社だったのですが、本社の事業フォーカスの変更に伴い、人的資源の不足が問題として顕在化していました。多くの熱心なユーザーをもつ魅力的なゲームタイトルを開発・運営する高い能力を持ったチームでしたので、そこに足りない要素であった人的資源を供給することで、彼らの有する能力を最大限引き出すことができたのだと思っています。

土橋:逆に苦労したことや難しいことなどありますか?

内藤社長:M&Aでの一般的な苦労かと思いますが、やはり大枠での合意から、最終的な合意までの細部を詰めるプロセスでしょうか。あとは、先ほど申した現経営者の退任後の体制づくりです。

また、先ほど「事業を伸ばすために足りないもの提供する」という話をしましたが、その点では、こちらがリソースを提供できるか否かが律速要因となりますので、M&A経験が豊富な人材の採用や育成が課題になります。

土橋:M&Aで相手先の規模感などの基準はありますか?

内藤社長:規模感よりも、一緒にバリューアップができるかどうか、両社の従業員にとってハッピーかどうか、という点を優先的に考えます。

 あとは、デジタル化の推進を事業の核としていますので、その業界にデジタル化の波が押し寄せたときに、生き残り成長を続けられるか、といった点も重要視します。例えば、ゲームや音楽などのエンターテインメントコンテンツは、デジタル化により、従来型コンテンツに比べて魅力的な価格でコンテンツが提供できるほか、高い利便性や自由度もユーザーにもたらし、ビジネスモデル自体がより魅力的に、競争優位性を持ちます。しかし、業界によっては単なる価格破壊にとどまり、その業界の衰退につながるということも考えられます。

土橋:アーンアウトなどM&A手法についての考えはありますか?

内藤社長:手法については特に制限もこだわりもありません。先ほども申しましたが、M&Aを行うにあたり考えるのはバリューアップができるか、ということと、従業員にとってハッピーなことか、という2点につきます。ですので、対象企業のキーマンとなる人とじっくり話し合い、従業員にとってハッピーな案件となるのか、このことをしっかりと見定めたいと思っています。

コストダウンによる利益の創出と違い、バリューアップをするためには、従業員がハッピーであることは必要不可欠です。特に、エンターテインメント産業は人が全てですから。

エンターテイメント業界では、大型のM&Aがしばしば行われますが、スクウェア・エニックスさんや、バンダイナムコさんなどの大企業同士のM&Aが成功した秘訣は、すべてを統合せず、互いの文化や仕組みを残し、共存する形にしたからだと僕は考えています。異なる文化が一つの組織という枠組みの中で共存することで、多様な価値観や視点が生まれ、それが対競合に対しての強みとなります。僕も、その点は絶対に大切にしたいと思っています。

起業家に向けて

土橋:起業したい人に何かアドバイスはありますか?

内藤社長:昔に比べると起業する環境は整っています。あとは起業に際して発生するであろうリスクを取るか否か、ということだけだと思います。

起業をしない人の多くは、起業のアイデアがないからではなく、そのリスクを取るという意志決定が出来ないのだと思います。

リスクを取るということは、言い換えれば、何かを得る代わりに何かを失うことであり、

起業することで得られるものと失うものを冷静に整理し、定量的に比較し、その結果得られるものの方が少しでも大きいと考えられるならば、そのリスクを取ったほうがいいと思います。

土橋:今から起業する人はどういうことをやったら良いと思いますか?

内藤社長:多くの人が、これから流行りそうなことや、儲かりそうなことを考えますが、僕は「自分が分かること」をやったらいい、と思います。

今の事業が順調に成長しているのも、もともと僕が、音楽、映画や漫画等のエンターテイメントが大好きで、その分野についてよく分かっているからで、仮に現在注目を浴びている業務改善系SaaSを始めようとしても、よく分からないし、熱量高く事業に取り組むことは難しい気がします。

好きなことや分かることであれば、自然と興味や関心が深まりますし、その高まる好奇心が、人とは別の視点を与えてくれ、新しい事業の核となる、人々が気づいていない何かに気づかせてくれます。

また、好きなこと、分かっていることの方が長続きしますので、事業の「Going Concern」という点からも、その事業が好きで、分かっているということは必須だと思います。

土橋コメント

 今回、内藤社長をインタビューさせて頂き、ドリコムの創業ストーリーから、今後のM&Aに対しての取り組み方を教えて頂きました。  

 幾度の困難を乗り越えてきたなというベテラン感を醸し出しつつ、とても爽やかで素直、そして賢い、内藤社長は本当にナイスガイでした。基本的には何事もトレードオフの発想、特に周期ごとに投資額を決めているのが流石でした!

 今年買収した会社のPMIも成功されてグループの業績も絶好調!

 今後は、ゲーム事業を中心としたエンターテイメントのDXに興味があるそうです。エンターテイメントはコロナ禍で元気のない業種も多いので、どのように仕掛けていくか楽しみです。

 ドリコム社のM&Aは加速しそうです。是非、ドリコム社、そして内藤社長にご興味があれば、資本提携に限らず、業務提携も見据えてご相談頂ければと思います。M&Aコンサルティングでは、事業承継やM&Aだけでなく、経営者の情熱やストーリーを多くの方々に繋げられるように、これからも経営者の思いを発信していきます

基本情報

会社名
株式会社ドリコム(英文名 Drecom Co.,Ltd.)

所在地
東京都目黒区下目黒1丁目8-1 アルコタワー17F

設立
2001年(平成13年)11月13日

資本金
1,735百万円(※2020年3月31日現在)

従業員数
326名(※2020年3月31日現在)

事業内容
ゲーム事業 メディア事業

役員
代表取締役社長:内藤 裕紀
取締役:後藤 英紀
取締役 監査等委員:青木 理恵
取締役 監査等委員:村田 雅夫
取締役 監査等委員:清水 勝彦

取材・執筆

株式会社M&Aコンサルティング
代表取締役 土橋裕太
インターン 笠原寛太、西田樹生、石川咲里、小林里佳

株式会社事業承継通信社
取締役COO 柳隆之

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